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人参に取り組む理由

有機、無農薬で十数年、四季折々の野菜を毎年作ってまいりました。

ある時、お客様から
「毎週10kgの人参を分けていただきたい。」
というご要望がありました。

商用に使うわけでもなく毎週10kgもの人参をいったいどうやって料理しているんだろうと思いお客様に尋ねたところ病気療養のため毎朝人参をジュースにして飲んでいるとのこと。
それは、野菜ジュースやスムージーがメジャーになる随分前のことで

「人参をジュースにするの?」

とびっくりした記憶が残っています。

実は、リンゴジュースとのミックスジュースや人参のすりおろし果肉の入ったミックスジュースなど作って販売していたこともありましたが、人参を生のままジュースにするという事に抵抗を感じておりました。

理屈では生の人参をジュースにすれば栄養価の面で身体に良いことは理解できるものの、我慢をしながら飲むようなことはしたくない。

でも、すぐ試したくなる性分。
早速ジューサーを購入し、ジュースを作ることに。

作り方はいたって簡単。

人参を茹でるわけでもなく、ただジューサーに入れて絞り出されたものを飲むだけ。

繊維質が分離され、サラサラのオレンジ色のジュースが出来上がりました。
見た目はきれい。

内心

「・・でも・・人参でしょ・・」

そう思いながら、恐る恐る口の先の方に含んでみました。

「あ・・」

人参、というイメージを払拭するような透き通った味、爽やかな甘さ、最後、舌に残るコク。

驚きました。

身体が喜ぶって、こういう事を言うんだ。

その時思った記憶があります。
聞くところによるとそのお客様は癌を患い、
化学療法を進めながらジュースを飲む生活をされているとのこと。

私の実の父と姉が癌を患いました。
家族が病気になったとき自分は、

゛苦しみや痛みを代わってあげることはもちろん、
お医者さんの様に治療してあげることもできない。”

そんな虚しさを心にした事がある方は多いのではないでしょうか。
初めて生の人参のジュースを口にしたとき、味に驚いたのはもちろん、

「私にも出来ることがある!」

と、決意を胸にした瞬間でもありました。

農薬や化学肥料に頼らない
元気な人参を作り、
人参ジュースを作る手間を少しでも楽にできるようにする。

健康の質を高めるために青汁やスムージーを飲む方が増えている昨今。

私ども家族は今日も、人参ジュースを飲んでから一日をスタートさせています。

久野千晴